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身近な親族から孤独死、遠い親戚…遺品整理サービス、トラブル回避のポイント

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2021/07/28

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イメージ/©︎takasuu・123RF

夏の暑さ――新型コロナで増える孤独死

夏は遺品整理サービスの依頼が増える季節だという。とくにコロナ禍によって孤独死が増えていると遺品整理業者はこう話す。

「これまでも夏は暑さで亡くなる方が多い季節ですが、新型コロナによる外出自粛や人と接することを避けるようにといわれているため家族やヘルパーが定期的にやってこず、急に自宅で倒れたまま亡くなって発見が遅れる事例もたくさんあるのです」

しかも、夏の暑さは遺体の傷みを早くする。

「孤独死では、遺体はそのままになってしまうので2~3日もしないうちに腐敗が進み、室内の異臭もきつくなります。孤独死で自分の家族が亡くなったり、夫婦二人暮らしで一方が亡くなった場所で遺品整理をする悲しみに耐えられない人もいます。だから、7月から9月にかけて、月に100~200件以上の遺品整理を行う年もあって、忙しくなりますね」(前出)

内閣府の「平成30年版高齢社会白書(全体版)」によると、65歳以上の世帯は、2416万5000世帯。平成27年の統計では、男性の一人暮らしは、約192万人、女性は約400万人だ。

夫婦のみの世帯や独居の高齢者は、夏バテなど体力の低下するこの季節に万が一の事態が起こらないと言い切れない。新型コロナワクチンの接種が進んだとはいえ、高齢者ともなると、コロナの重症化リスクも高く、まだまだ安心できない。

加えて、真夏は自宅や外出先で、熱中症にかかって命を落とす人も少なくない。

厚生労働省の「人口動態統計」を見ると、平成30年における熱中症の死者は、1581人。うち、65歳以上の高齢者は1288名で、実に8割以上がお年寄りだ。

また、気温30度を超える猛暑の最中、遺品整理をするにしても体力的に厳しい。多少の費用を支払ってでも、業者へ依頼するほうが、肉体的にも精神的にもメリットがある。

料金の目安は、部屋の間取りや作業員の人数にもよるが、3万円程度から30、40万円以上にも及ぶ。

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タンスには現金や株券が眠っていることも!

コロナ禍にあっては、離れて暮らす親族は、県外への移動を自粛することもあるので、亡くなった家族の家の鍵を郵送などで渡して、遺品整理に立ち会わないケースも増えているという。特に亡くなった本人が独居の場合、親や子ども、兄弟以外にもおじ・おば、甥や姪といった遠い親戚遺品整理をしなくてはならいこともある。こうしたほとんど交流のない親族では、遺品整理は多くの落とし穴があると、前出の業者は明かす。

「特に一人暮らしの方が亡くなると、子どもや親戚でも、タンスや引き出しの中に何が入っているか正確に把握している人はほとんどいません。遺品整理をしていて、タンスの中からへそくりで貯めていた、現金が出てくることなんて日常茶飯事。現金は当然、ご家族へそのままお渡ししますし、ご遺族も『現金が出てくれば渡してください』と事前に言われることも多いのですが、問題は物品です。タンスや引き出しに宝石類や時計といった貴金属類、高級な着物、金塊、古い株券も出てくるケースがあります。株券は相続人など、ご家族でないと処分できませんが、貴金属類や金といった高価な品物は、悪質な遺品整理業者がこっそり持ち帰って、売りさばくケースもあるので要注意です」

現在、株券は電子化に伴いペーパーレス化が進み、上場会社の株券は紙媒体の発行が廃止されている。株券などの有価証券は、本人が亡くなっても株自体がなくなるわけではない。引き継ぐ場合は、相続の手続きが必要だ。証券会社や信託銀行に連絡して、相続人の戸籍謄本や印鑑証明書、株式名義書換請求書など、必要な書類を提出して、手続きをしないといけない。

亡くなった当人の家の中には意外なお宝が眠っている?

このように相続の手続きが必要なものはよいのだが、宝石や金などは、貴金属の場合は対応が違ってくる。しかも、そのものの価値が分からず損をすることもある。

「ご遺族は、ご本人の持ち物の価値をよく分かっていないケースがあります。遺品整理業者はリサイクルショップを経営している会社も多く、『安く引き取ります』と言って、家電やタンス、洋服類などを持って帰ることもあります。最近は中国で、日本の仏壇がアンティークとして売買されていて、仏壇が一基、70万とか80万の高値で取引されることもあり、好事家の人気が高くひそかな需要が高いものなのです。『仏壇の処分なんて面倒だから持って行ってください』と遺族から言われると、業者としては儲けたと思いますね。

あと、洋服類の中に加賀友禅とか高級な着物があって、売り払う業者もいます。加賀友禅だと、1着10万円前後で買い取りしてくれるお店もあって、意外と儲かる。以前、タンスから数キロの金の塊をいくつか見つけて、貴金属の買い取り店で売り払った人もいたそうです。まとめた遺品が数百万円や1千万円単位で売れることもあって、あとで遺族が気づいて問題になることもあります」(遺品整理業者)

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適度な関係のつくり方

では、そうしたトラブルを防ぐには、どうすべきなのか。

親やきょうだいなど身近な親族であれば、頻繁な行き来がなくてもなくて、会ったときにはそれとなく聞き出すことも可能だろう。遺品整理に詳しい司法書士はこう話す。

「家の中に何があるのか、まず把握しておきたいですね。『タンスにお金が入っていない?』とか『着物とか、早めに処分しておけば?』、『宝石類も整理しておいてね』など話をすることで、ご本人もしまったまま忘れているケースもある。高齢者ともなれば、なおさらです。

離れて暮らす親類は、弁護士や司法書士、故人の近所に住む親しい友人など、遺品整理業者を監視してくれる第三者に立ち会いをお願いするのも予防の手段です」

整理の過程で、高価買い取り対象の物品が出てくれば、それを遺品整理業者への代金とすることも可能だ。

国民生活センターによると、「大切な遺品を処分された」など、遺品整理に関するトラブルが年間100件前後寄せられているという。遺品整理で損をしない、あるいは自らが出費しないためにも、できれば家族・親族とのコミュニケーションを取っておきたいもの。コロナ禍の今、暑中見舞いや年賀状でも出して、それとなく近況をたずねながら、近づきすぎず、遠くない適度なつながりをつけてみてはいかがか。

 

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この記事を書いた人

記者・ライター集団

政治、経済、ビジネス、マネーなどさまざまなジャンルを取材、執筆活動を行っているフリージャーナリスト、ライター、カメラマンなどによる叶舎LLC.の取材チーム。

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